今日駅からの帰り道、コンビニの前で一心不乱にファブリーズを
全身に吹きかけている三十代後半くらいの女性を見かけた。


そのファブリーズはそこのコンビニで買ったものなのだろうか、
もしかしてファブリーズは常に持ち歩いているのだろうか、
なぜそこで急に服の臭いが気になったのだろうか、
ファブリーズでなくとも8×4のような制汗剤で用を足せたのではないか、
など疑問をあげると枚挙にいとまがない。


確かに服の臭いや体臭に気を配るのはエチケットではあるものの、
恋人ともうすぐに会える時間を楽しみにしてブレスケアをするような
ロマンチックなものはそこにはなく、自分の身に染みついてしまった
何かの痕跡を、偏執狂的にふるい落とそうとしているかのようだった。



そんな不思議な場面に遭遇した偶然を噛みしめながらその場を
通り過ぎると、香ばしい焼き肉屋の匂いが漂ってきた。


そういえばその女性のものらしき自転車のかごには、主婦がよく使うような
かご全体を覆うタイプの買い物用のカバーがついていた。


案外旦那や子どもに内緒で、こっそり友達と焼き肉を食べに行ったのが
家族にばれるのを恐れたためとか、そんな理由だったのかもしれない。